洞窟学


洞窟とは

 最も一般的には、「大地(岩石や土壌など)にある、人がすっぽりと入る大きさの空洞」を「洞窟」といいます。人間が造った地下空間も広い意味の洞窟に含まれますが、単に「洞窟」といった場合には自然にできた空洞(自然洞窟)を指すことが多いようです。日本にある自然洞窟をそのできかたで分類すると、①岩石が溶かされてできた「溶食洞窟」、②水や風によって削られてできた「侵食洞窟」、③火山の噴火に伴って形成された「火山洞窟」、の主に3 種類になります。


日本の洞窟

 長さが1000 m以上の自然洞窟だけでも約90 箇所が知られています。短いものも含めると数千はあるだろうと言われており、現在でも新しい洞窟が毎年報告されています。代表的な「溶食洞窟」である石灰岩中の洞窟(その多くが鍾乳洞として知られている)は、限られた地域にありますが、数十の洞窟が観光用に公開されています。「火山洞窟」の多くは富士山周辺に分布しており、「侵食洞窟」のうち海岸にあるものの幾つかは“青の洞窟”として知られています。


日本の石灰岩

 日本には先カンブリア時代(5億7千万年以前)から新生代第四紀(現在)までに形成された石灰岩が分布しています。個々の石灰岩の規模は小さいため、石灰岩地域の総面積は国土の約0.4%にすぎませんが、北海道から沖縄・小笠原まで、日本各地にさまざまな石灰岩が見られます。
 古生代から中生代に形成された石灰岩の多くは太平洋中の生物礁起源で、海洋プレートの移動とともに日本列島にたどり着いたものです。新生代新第三紀~第四紀(現在)の新しい石灰岩は、おもに隆起サンゴ礁として南西諸島に分布します。
 カルスト地形がよく発達する大規模な石灰岩台地は多くありませんが、山口県の秋吉台はカルスト台地の代表例です。このほかに、福岡県の平尾台や岡山県の阿哲台などが知られています。


洞窟の研究

 洞窟は観光やスポーツとしてのケイビング(洞窟探検)の場として利用されていますが、様々な分野における研究対象でもあります。洞窟の形成や水・気候との関わりなど「洞窟」空間に関することを主な対象とする地理学・地質学・地球物理学・地球化学・鉱物学・火山洞窟学などの研究や、洞窟内およびその周辺における生物やそれらの痕跡などの「洞窟」空間の利用に関することを主な対象とする生物学・古生物学・人類学・考古学などの研究が世界中で行われています。人類進化を解き明かすカギとなる人骨は洞窟から発掘されることが多く、太古の動物の化石も産出します。また、鍾乳石に記録されている昔の気候変化を解き明かす研究も盛んに行われています。さらに水資源や鉱物資源とも深い関係にあり、自然保護や産業的な側面からの研究もおこなわれています。このような洞窟の調査・研究は洞窟の概要を明らかにするための探検と測量調査から始まります。したがって、洞窟探検技術は必要不可欠なものであり、洞窟研究は探検技術を持つ方々と様々な分野の研究者との協力によって成り立っています。 主に、下記に示すような分野での研究が関わっています。


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