ガイドケイビングツアーのリスク管理について
2023年11月7日
2023年10月10日に沖縄県与那国町でのケイビングツアーにおいて重大な洞窟事故が発生しました。お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りし、謹んで哀悼の意を表します。
日本洞窟学会では、2014年に「ケイビング・洞窟調査を行うにあたっての倫理規定・行動規則」(以下、ガイドライン)を策定し、これを遵守することを推奨してきました。殆どの洞窟関係者はこのガイドラインに則って洞窟活動を実施していますが、一部にはこれに逸脱した行為が行われる例もあるようです。洞窟に関わる全ての皆さまにおかれましては、ガイドラインに基づいた倫理的かつ安全な洞窟活動を行われることを改めてお願いいたします。
国内においては、古くから各地の洞窟が観光用に公開され、多くの方々が洞窟を訪れています。更に、この10年ほどの間に商業ケイビングを催行する観光業者が急増し、一般の方が体験型観光の一環として洞窟探検を行うことができるようになりました。このようなネイチャーツアーの普及により、洞窟の持つ神秘や驚きを多くの人が体験する機会が増加した一方で、洞窟特有のリスクに伴う事故がこれまで以上に発生することが懸念されます。
商業ケイビングを含むガイドケイビングツアーの催行者は、個人の責任で行われるケイビング以上に洞窟の本質的リスクを熟知して、より厳格な安全管理を行うことが求められます。洞窟のリスクと洞窟環境は深く関連しており、更に洞窟環境は地表で起こる様々な現象の影響を受けて成立しています。そのため、真に安全な洞窟活動を行うためには、個々の洞窟について知るだけでは十分とは言えず、その地域全体についての学術的知識も必要となります。日本洞窟学会では、学術講演会や安全講習会などの定期的開催を通じて洞窟に関する知識・技術を共有・更新し、洞窟活動に関わる大学や社会人団体の方々に向けた各種講習会やアドバイスなどを行ってきました。今後は、近年のガイドケイビングにも 対応したガイドラインの改訂を行うとともに、ガイドケイビングの催行者を含む洞窟に関わる個人や団体・組織とより一層連携しやすい環境づくりを進める所存です。