日本洞窟学会洞窟救助委員会 後藤 聡
5-6日目の訓練は同じ場所で同時期に行われていた
Stage CTという事故時のマネージメントや通信などの訓練を行っている講習生などと合同で
おこなった。我々Internatinal StageのメンバーはStage CTメンバーの指示の元、
レスキュー作業を行った。
訓練に使った洞窟の縦断面図。 | ポストコマンド(指令本部)前に止まっている車両群。消防の車両も来ている。 |
訓練に使った洞窟は深さ600mを超える大きなものであるが、
訓練はその内の一部分、深さ200mで事故が発生したとの想定でおこない、93人の人員が参加した。
そのうち、実際に洞窟に入洞したのは68人である。
事故発生の第一報は朝の7時半ごろという設定で行なわれた。
昼前には事故現場までのリギング、電話の配線、事故者の介護などの班が出動し、作業を開始していた。
我々Internatinal Stageの班は搬出班として、夕方に投入されることになっていた。
夕方にポストコマンドに行くと救助活動の指示が与えられたが、投入までしばらく時間があり、
待機することとなった。その間、装備の用意や食事などを取っていた。
指示は左の写真のように文書や図で示され、口頭のみの指示はない。
指示を受けたパーティリーダーは指令本部に置かれた測量図を見ながら必要な装備などの計画を立てる。
ポストコマンドに掲示された測量図 |
| |
SSFの所有するレスキュー装備の数々。ポストコマンドに置かれた装備管理室にある。 | 装備は装備管理者によって出入りがチェックされている。 各パーティリーダーが立てた計画に必要な装備は、この装備庫で調達される。 |
洞口には左の写真のように2本のロープが張られていた。 リビレイのための鉄のはしごのような人工支点が用いられ、 完全なオーバーハングが得られていた。 | 昇降用のSRTロープのアンカー部分に固定された電話線。 人の通る通路からはできるだけ離れた形で張られているが、 避けようの無い狭い通路では十分に注意しなければならなかった。 |
洞内と本部とは有線電話および無線が使用された。洞窟内では有線電話が、
洞口とポストコマンドとは無線系電話によって結ばれる。左の写真は洞内に
設置された電話で通話をしているところである。SSFは2線式の電話を使用しており、
電話機は搬出チームの分担の境界などに置かれていた。
各パーティは電話機を通過する際に本部への連絡を義務づけられていて、
本部ではどのパーティが何処のブロックにいるかを把握できる。
搬出パーティは4パーティに分けられ、洞内の4つの区間をそれぞれが担当した。
各パーティは割り当てられた区間のリギングを確実に行うことだけを考えれば良い。
事故現場付近では負傷者はレスキューシートで作られた快適な空間で過ごし待機しており、
全区間のリギングが終了するころに搬出が開始される。
移動中の快適でない時間をできるだけ短くする必要があるからであろう。
そして搬出が開始され、自分のパーティの受け持ち区域が終了すると、
そのパーティは次の区間の担当パーティに担架を引き渡し、
使い終わったホーリングシステムを撤収し、
その上のパーティの引き上げや更に上のパーティのリギングの合間を見ながら、
速やかに出洞する。担架が洞口を出るまで待つことなく、担架を乗り越えていくのである。
搬出は事故発生後18時間あまりあとの深夜2時に搬出が開始され、
10時間後の12時に担架は洞外へ搬出された。筆者は未明の5時から6時半まで担架の搬出に関わり、
その後出動を開始したけれど、担架に阻まれて、洞外に出ることができたのは10時となってしまった。
レスキューに関わった個人が何処にいて、 何をしているかを記録するシート。ポストコマンドで運用されていた。 | 入洞管理チャート。 パーティごとの管理で各パーティに与えられた命令、現在位置などが把握できる。 |