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国際洞窟救助訓練報告

Report of Stage Secours International 1997 - Speleo Secours Francais

日本洞窟学会洞窟救助委員会 後藤 聡


ディギング技術


 訓練9日目は爆薬を使っての岩の破壊や、 岩に穴を開け、楔を打ち込んで割る方法などディギングについての実習であった。 午前中は講義で午後になって近くのスキー場脇の崖に転がっている岩で実習を行った。
 爆薬を使ってのディギングは、 危険が大きいことや爆薬の取り扱いができる人が少ないことなどから、頻繁には行なわれないようである。 とはいえ、民間団体がおこなう訓連で爆薬が取り扱えることなどは、日本に比べれば遥かに規制は緩いようだ。 爆薬が扱える人の条件にはどのようなものがあるのかと、講師の爆破専門家に尋ねたところ、 テロリストでないことという条件があると答えてくれた。 無論、それだけではないのだろうけれど重要な条件であることは間違いない。

ディギングに使う装備の一部。
一番手前が各種のくさびである。
中央には雷管が見える

今回使用した爆薬。ビニールに包まれたTVの同軸ケーブルのような形状で、 必要なだけ切って使う。切り口には酸化を防ぐためグリースで封をしていた。 このタイプの爆薬には太さによって何種類かあるが、細いほうから2番目の物を使うようだ。 これは振動ハンマードリルなどで有名なヒルティ社の爆薬入りのクサビ。 これをドリルで開けた穴に入れ、後ろから金属製の棒を介してハンマーでたたき込む。 この爆薬は150gの物体を初速100km/hで130m飛ばす能力があるとのこと。

直径16mm、深さ15〜20cmほどの穴をドリルで開ける。 これは通常使っているドリル径よりも太く深い。 ここではエンジンを使用した振動ドリルを使った クサビのガイドを入れる。ガイドは穴の両側に沿っていれる。
クサビ本体を入れハンマーで叩き込んでいくと、 岩に亀裂が走り割れる。完全に割れないこともあるが、 その場合は別のクサビやバールなどで、できた亀裂に沿ってハンマーで叩くと割れる。 思ったより簡単に割れるし、装備も少なく済むので採用の価値はある。


 爆薬によるディギングは、雷管の取り扱いが難しいこと、 雷管や爆薬の入手が法規制などにより限られた法人にしかおこなえないなどのことから、日本では非常に厳しいと思われる。 唯一考えられるのは、そうしたサービスを提供する株式会社を作るか、現状ある企業にサービスの提供 をお願いするぐらいしかないだろう。いずれにしても、困難であるのはまちがいない。

直径6mm程度のドリルで深さ40-60cmの穴を開ける 最初に爆薬を入れ、次に左の写真に見える雷管を入れ、 最後にたばこのフィルター程度に丸めたアルミ箔を詰める。

爆薬を装填した後のもの。左側は雷管が開けた穴の中にあるが、 左側は二つの穴を一つの雷管で爆破するため、雷管と爆薬が穴の外側にある

起爆装置はカメラのストロボを改造したもの。 ストロボを光らせる瞬間の高電圧を雷管に流しているようだ。 爆破直後の様子。爆破の瞬間には閃光が見え直後に爆音が轟く

爆破によって割れた岩の断面。ドリルによって開けた穴に沿って割れる。 穴の周辺にはこげた後がある。 爆薬の量が足りなかったために割れなかった岩。 ドリルで開けた穴を中心に亀裂が走っている。


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