日本洞窟学会洞窟救助委員会 後藤 聡
SSFのトレーニングを通じて感じたことは各個人の技術も必要であるが、
それ以上に多数の救助要員を動かす管理能力のほうが重要であるということだ。
これまで日本ではレスキュー訓練というと、
ホーリングやセルフレスキューなどなど個々のテクニックに集中しがちであった。
しかし、そのような訓練だけでは実際の大規模なレスキューに適切に対応するのは難しい。
むろん、レスキュー要員として従事できるだけの人員が不足している現在では、
そうした訓練も必要であるが、
大規模なレスキューに対応するためのトレーニングも平行しておこなう必要があるだろう。
そして、そのための装備も必要である。
ここ10年あまりにレスキューの重要性を認識し、訓練をおこない、
担架などの装備を揃えるグループも増えてきた。
しかし、そうしたグループ間での技術交流、人的交流はあまり盛んでない。それは
大人数が必要となる大規模なレスキューの際にスムーズな人員招集ができないことや、
その際に使う技術も統一されていないということに繋がり、
レスキューをより困難に時間のかかるものにしている。
そうしたことからも、今後はグループ間の意思疎通を図り、
レスキュー自体の重要性を認識していないのではないかと思われるグループに対しても、
啓蒙をおこなうなどの活動をおこなっていく必要があるのではないだろうか。
欧州と日本のケイブレスキュー体制には大きな開きがあり、
一朝一夕にその差が縮まるとは考えられない。最も大きな理由は
ケイビング人口によるものかもしれない。
しかし国際洞窟学連合洞窟救助委員会に登録しているレスキュー組織を持つ国には、
日本よりも少ないケイビング人口ではないかと思われる国もある。
レスキューの訓練よりも探検・調査の方が楽しいく容易であるのは事実であるけれど、
事故により閉鎖される洞窟を増やさず、またそうした洞窟の管理者に対して、
事故時の対応ができる組織があることを提示していくことが必要とされてくると思う。
最後になるが、この報告が今後の日本のケイブ・レスキュー体制の確立への一助となれば幸いである。