地表と違って、洞窟は一般に強い侵食作用から保護されているために、過去の様子をよくとどめています。ジュール・ベルヌの「地底旅行」では、 地球の中心につながっているというアイスランドにある火山洞窟の奥深く、太古の世界がでてきます。これは全くの空想小説ですが、多くの自然の洞窟には数万年ないし100万年くらいの歴史が残っています。
たいていの自然の洞窟は水に溶ける性質をもった石灰岩の中にできていますが、そこを流れた昔の川の跡やそれらが残した堆積物、その頃にできた鍾乳石、その頃に地上から流れ込んだ動物の遺骸(化石)、その頃に起きた落盤(地殻変動)の跡、 などから地学的な歴史を知る手がかりが得られます。残念ながら、調査が容易でないため、研究者の数も少なく、そのために洞窟は多くの場合に今でも未知の世界のままなのです。
地質学の分野では、洞窟内に残っている侵食地形や地層(火山洞窟の場合には、溶岩やその流動地形)、鍾乳石などの鉱物、化石、割れ目系、地下水の流れなどを総合的に調べ、野外の地形や地質との関係から、 主に洞窟ができてきた歴史やその地学的位置づけを明らかにすることを主な目標として、多くの人が研究を進めています。これらの研究成果は、学術面だけでなく、土地や地下水、石灰石資源などの開発や利用、 また洞窟を取り巻く自然の保全や保護にも色々の面で貢献しています。