2000-2001 吉村 和久
日本には,石灰洞(鍾乳洞),溶岩洞,海食洞などさまざまな洞窟があります。 洞窟学は,これらの洞窟に関するあらゆる研究分野から成り立ちます。 また,研究のためには,洞窟探検もかかせません。日本洞窟学会は1975年に創設されました。 それまでに既にあった洞窟生物の研究者による日本洞窟地下水研究会や地学関係の研究グループが母体となりました。 最近になって、ケイビング組織および日本火山洞窟協会との合併も完了し, いよいよ飛躍の時期を迎えております。 洞窟学会は,地質,物理・化学,生物,古生物,地理,人類・考古,ケイビング・探検技術,火山洞窟の8つの専門分野から構成されます。 1999年には日本学術会議へ登録され,学術団体として公にも認められました。 洞窟研究の黎明期から御尽力いただいた諸先輩方の御努力に報いるためにも, 学際的な広い分野からの研究を推進し,洞窟に関する教育・啓蒙,洞窟の保全と持続的利用のために, 得られた成果を今まで以上に役立てることを積極的に目指さなければなりません。
日本洞窟学会では、日本各地において年1回の総会と学術講演会を開催します。 今年度は8月に福岡県苅田町でカルストフェスティバルの一環として開催されます。 招待講演,公開シンポジウム,ポスタ-発表による学術研究報告, 大会巡検など盛り沢山の企画が予定されています。 また,プレエクスカーションとして,ケイビングを楽しむとともにケイビング技術の講習, 情報交換がおこなわれます。 これ以外にも,洞窟学会では学術誌「洞窟学雑誌」を年1回, 情報誌「ケイビングジャーナル」を年3回配付して, 世界のケイビングおよび洞窟学に関するあらゆる最新情報を提供しております。 また,国際的な組織「国際洞窟学連合 UIS」のメンバーであり,国際交流にも貢献しております。
学際領域であることも関係して,日本において洞窟学を専門に研究することのできる機関や施設は極めて稀です。 したがって,洞窟学の専門家の数は非常に少ないのが現状です。 しかし,裏をかえすと,アマチュアと専門家との距離がもっとも近い学会の一つといっても過言ではありません。 また,洞窟探検では,だれもが知っている洞窟であっても,そこからさらに未知の大洞窟がのびている可能性は残されています。 より高い山に登るパイオニアワークはチョモランマ登頂で終わりましたが, 洞窟探検にはまだその余地が十分にあるのです。 私は,大学探検部に所属して以来,多くの仲間とともに洞窟探検を満喫してきました。 同時に,洞窟は私にとって尽きることのない興味をかき立てる研究対象としてもあり続けています。 このような世界をのぞいてみたいと思われた方は,是非洞窟学会に入会されて, 探検や研究に挑戦してみて下さい。 洞窟学会はそのような方のお手伝いをいろいろすることができるはずです。
前にも述べましたように,洞窟学会は環境整備を終えて飛躍を目指す時期にあります。 しかし,どのような方向に飛び出すかは,会員の総意に基づいて決めなければなりません。 背伸びし過ぎても,いろいろ破たんが待っています。 したがって,着実にできる所から進めて活性と柔軟性を兼ね合わせた学会にしていきたいと思います。 そのためには,会員全員の支援と学会運営への積極的な参加が必要です。 我々のための学会をより良いものにするためにも,御協力をお願い致します。