横穴探検技術
後藤 聡著
Ver1.1(02/07/25)
序論
横穴を探検するために必要な技術は、それほど特殊ではないが、説明しにくいものである。
洞窟内で遭遇する場面ごとの注意点を列挙するが、全てに通じる原則がある。
もし、あなたが何らかの障害の通過に自信が無いならば、
迷わずリーダーにその旨を申しでなければならない。
初心者であろうが、ベテランであろうと、洞窟の中で壁を登ったり水を渡る際に、
何らかの不安を感じたらリーダーにその事を伝えなければならない。
ベテランであろうとも体調が優れなかったり、装備に不具合が起きれば初心者と変わらない。
リーダーはその場その場で適切な安全策を講じるか撤退するかを考える必要がある。
もし、あなたが僅かな手間や時間を惜しんで怪我をするような事があれば、
その後あなたは困難なレスキューという作業に携わらなければならなくなるかもしれない。
ルートファインディング
洞窟は時として、迷路状となり、帰り道を失う事がある。
特に、洞窟に慣れていないグループほど迷い易い。迷い易い個所としては、
- 狭い岩の隙間から大きなホールに出る場所
- 小さな開口部から単調な通路に出るような場所
前者では、ホールの何処から出てきたかが判らなくなり、
後者では正しいルートに気が付かずに通り過ぎてしまう。
迷わないためには、こうした迷い易い場所に出くわしたら、
しっかりとその周囲の状況を確認することである。どうしても不安であれば、
サイリウムライトやアルミホイルのような光に反射し易い目印のプレートを置くが、
この行為を行わなければ洞窟に安心して入れないということは、非常に恥ずべきことである。
洞壁を傷つけて洞口の方向を示したり、
洞口からスズランテープやタコ糸などを引いて入るのは止めるベきだ。
これらの物は、洞窟の中の美観を著しく損ねるし、回収が困難だ。もし、あなたが洞窟に行ったら、
これらの紐が洞口から何十本と洞窟の奥深くへ引かれいて、洞窟の中を歩く時に、
足にまとわり付いても気にならないのだろうか。
そして肝心な時にどの紐に沿って入ったのかが判らなくなってしまえば、迷いの原因となる。
少しの経験を積めば、道に迷う事は少なくなる。
経験を積むまでは、経験者の下でルートファインディングの訓練を積み、
プレートなどに頼らない能力を獲得すべきである。経験者が誰もいない場合には、
プレートなどが必要ない範囲での入洞に留める。プレートなどを使用して入洞し続けていると、
ルートファインディングの能力はなかなか獲得できないだろう。
帰り道でなく、洞窟の最奥を目指すにも、それなりの能力が要求される。
測量図があり、読み取る能力があれば、最奥を目指す事は簡単である。
洞窟の特徴的な形状や屈曲などを頼りに現在位置を把握しながら進む。しかしながら、
大きな洞窟のばあい、測量図は小さく細かな場所や小さな通路の場合には、
何処にいるのか判らなくなる事は良くある事である。
迷ってから自分が何処にいるのかを測量図で把握するのは難しいので、
時折測量図を見ることは必要だろう。
しかし、測量図の無い新発見の洞窟では、水流や気流、洞窟内地形、
地表地形などを頼りに最奥を目指す事になる。
入洞している洞窟を作った水流が流れている場合は、
水流沿いに進む事で最奥に辿り着く事ができる。ただし途中で水没していて、
通過できない事もあるが、水流近くの上層などに旧流路などが残されていて先に行ける事もある。
冬や夏であれば洞窟内は風が吹いている事が多い。横穴の場合、夏は吹き出し、冬は吸い込み、
竪穴であれば夏は吸い込み、冬は吹き出しである事が多い。洞窟は人が通れない場合がほとんどであるが、
複数の洞口をもち、標高の高い洞口と低い洞口とのあいだに気流が生じる。
したがって、風の吹く方向、あるいは吹いてくる方向に進む事で最奥、
あるいは地表へ通じる通路に辿り着く事ができる。
洞窟内地形により、最奥を判断する方法はいくつかあるが、決定的なものは少ない。
例えば、洞壁にスカラップと呼ばれる凹凸があると、その形状によって、
過去の水流の方向を知ることができる。また流入型の成因を持った洞窟であれば、
下へ下へと行くし、流出型であれば、徐々に上へ登る傾向があるだろう。
基本的には過去の水の流路を追いかけるのが基本だ。
地表地形を参考にする場合は、その洞窟を作った水が何処から供給されているか、
何処へ流れ出しているか、石灰岩帯の広がる範囲はどのくらいかなどを調べる。
むろん洞窟内ではコンパスを使用し、下調べした方向へ進むようにする。
測量図があっても、未記載の支洞がある場合もある。洞窟内外で観察される地形と測量図とを比べ、
洞窟が続いていそうな測量図上の空白地域を調べると良いかもしれない。
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左 :胸厚に近い狭い通路での匍匐
左下:膝が立つ程度の匍匐前進
右下:水流のある部分での匍匐前進 |
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匍匐前進
匍匐前進は天井高が30-50cm程度の通路で用いられる。腹ばいになり、
手と足首の動きにより這って進むのである。特段難しくはないが、
洞床が泥やグアノであったり、水流が流れていると大変不快である。
天井がいくぶん高い場合は膝と手や肘で四つんばいになって進む事もできる。
この場合は洞床にゴツゴツとした小石が落ちていると、とても痛いし膝や肘を痛めるので、
膝当てなどがあった方が良いかもしれない。
匍匐前進のある狭い通路では、通過に時間がかかる。
100m進むのに1時間かかることも珍しくはないので、計画段階で留意しておいた方が良い。
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左:幅の狭いクラックの通過
中:鍾乳石で狭められた通路の通過
右:水の溜まった狭い通路の通過 |
狭洞
洞窟の中には人一人がやっと通れるぐらいの狭い場所や通路がある。
こうした場所を狭洞と呼ぶ。狭洞といっても、その形状は様々である。
断面形によって分けることもできるが、明確な区別がある訳ではない。概ね
クラックの幅が狭い。鍾乳石で狭められた場合もある
天井と床の間隔が狭い。この場合、床に堆積物が溜まっている事が多い
直径の小さな円形断面をしたボアパッセイジ
二次生成物によって狭められた場合
などである。
いずれの場合においても、その距離が短かければ良いが、
距離が長かったり屈曲していたりすると通過困難なルートとなる。
一人通過するのに5分かかるとすると、6人パーティの通過には最低でも30分かかる。
もし、誰かが苦労して30分かかるとすれば、僅か数m進むのに1時間かかる事となり、
狭洞は洞窟を探検する上での大きな障害である。
しかしながら、もっとも問題なのは、こうした場所の先で、怪我をして歩けなくなった場合に、
担架を用いて洞窟外に搬出する事が著しく困難になるという事である。
したがって、狭洞を通過した先では、普段以上により一層慎重な行動が求められる。
狭洞を通過する際には、その断面形状を観察し、最も広いと思われる場所へ体を入れていく。
一般にはヘルメットが通れば体も通るといわれているが、手足や体の向きを間違えれば、
通過できない。手は頭の上に上げた方が通り易い場合が多い。洞窟がどちらへ屈曲しているか、
手足を入れる空間はどちら側にあるかを考えて、体の向きを考える。
特にあなたが体格が良かったり、身長の高い、あるいは柔軟性に乏しいと自覚しているならば、
他の人よりも詰まり易いということを自覚しなければならない。逆にあなたが小柄で、
体が柔らかいならば狭洞の通過は非常に楽である。しかし、
自分の通れる限界まで狭い場所に行って詰まってしまった時、
一体誰が助けに来れるのだろうかということも考えておいた方が良い。
特に下向きに傾斜している狭洞に頭から入る事は避けるべきである。
万一、詰まった場合に頭が下にあると自力で脱出できなくなる危険が高いし、
頭が心臓より下にある体勢で長時間詰まることは、何を意味するだろうか?
足から入って詰まった場合に比べて、死亡に至るまでの時間が著しく短くなるのは容易に想像できるであろう。
狭洞で詰まった場合、岩と体が接しているため体温を奪われ易い。空気と接触している場合と比べ、
4倍の速度で体温を失うとの報告もある。その結果、低体温症を引き起こしてしまうだろう。
そうなるまでの時間は、環境により異なるが、過去の海外での事故例では数日程度である。水流があるなら、
もっと短いに違いない。
したがって、新ルートを探している場合に、
長い距離の狭洞に入る際には回りの人に声を掛けてから入る。万一詰まった場合に、
仲間はあなたが何処にいるかを探し出すのに苦労し、時間を浪費してしまうかもしれない。
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左:両手両足を使いクラックを登る
右:背中と手足を使ったチムニー |
チムニー
チムニーとは煙突状の通路を上り下りする技術のことであるが、
実際的には煙突状の通路だけでなくクラックやトレンチなど、
体の両側に壁面があるような場所であれば何処でも使用できる。
洞窟の中には、こうしたチムニー技術を使える場所は非常に多く、
とても多用するので、しっかりと慣れておく必要がある。
チムニーは相対する壁面の双方に手や足、背中や臀部などの体のあらゆる場所を押し付けて、
体を支えながら上り下りすることを言う。ただし、多くの場合は、壁面に凹凸があるので、
そこに足や手を掛けることで安定した上り下りが可能である。しかしながら、壁面に凹凸が少なかったり、
湿っていたり、泥で覆われている時にはあまり安定しなくなる。そういう時は壁に手足を掛けるのでなく、
両側の壁に背中と手などで壁に押し付けるような力を加える。
そうすると突っかえ棒のように体が安定する。そして、徐々に体をずらしながら上り下りをするのである。
背中に荷物を持っていると、背中が使えなくなるため、非常にやりにくくなる場合がある。
そうした場合は荷物を腰ベルトに吊るすのが良い。
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左:フローストーンの壁を登る。ホールドが多いので難しくはない
右:滑らかな壁は非常に小さなホールドしかなく難しい |
フェイスクライミング
チムニーが使えないような場所の壁や通路の段差を登り降りする時に使われる。
上り下りする際には3点確保というテクニックが基本となる。3点確保とは両手両足の4点のうち、
3点を壁の突起や窪みなど、体の重さを支えられるホールドに置き、残りの1点を、
新たなホールドへ移動させ4点で体を支えたら、
他の1点をホールドから外して新たなホールドへ移動させるということを繰り返しながら移動することである。
この時、ホールドに力をかけた時に壊れたりしないかの確認は必要だ。また洞壁は濡れていたり、
泥が付着している事がほとんどなので、滑りやすいという事も頭に入れておこう。3点確保でなく、2点などで確保する場合は、
その2点がとても安定している場所にあることが必要である。
フェイスクライミングではチムニーより転落した時の危険が大きいので、
あまり高い距離や、難しい場所、
登っている場所の床が不安定な場合などには確保無しに登ってはならない。
特に屋外の岩場で行われているフリークライミングの対象になるような場所では、
必ず確保やあぶみなど人工支点を取る事が必要となる。
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左:テープで作った簡易アブミを使う
右:フローストーンの斜面を降りる。チムニーを使用している |
段差
洞窟内には高さ1-2m程度の小段差は多数ある。
たいていは前途のチムニーやフェイスクライミングで対処可能だ。
しかしパーティ内には様々な人がいて、登れる人と登れない人とがでる可能性は高い。
そうなってしまうと、パーティの行動が取れなくなるので、
クライミングテープや細引きなどを携行しておき、
登る自信が無い人が現れた時には、
そのテープ類でアブミを作るなどして補助する事が必要となるだろう。
洞窟内での僅か1mの転落でも、足を挫いたりしてしまえば、
怪我した人を洞窟の外に連れ出すのに、大変な労力が必要となる事もあるので、
無理はしないようにすべきである。
わざわざ、洞窟の中でクライミングを楽しむ必要はないだろう。
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水面から5mの高さの滑りやすい
フローストーンの上部を渡る。
確保ロープが渡されている。 |
トラバース
トラバースは床や水面から高い位置の壁や、小テラスを渡ることである。また、
竪穴の縁や深いクラックの上部を通過する場合もトラバースと呼ばれる、
したがってそうした場所で、転落した場合は大怪我をする危険があるため、
安全策を講じて渡らなければならない。
たいていの場合は足場がしっかりしており、転落の危険が無いのであるが、
それでもロープを渡してそれに手を掛けながらか腰ベルトとカラビナで連結して移動する。
ロープの両端は確実なピラーなどのナチュラルアンカーかボルトハンガーに固定する。
この固定方法については竪穴技術と同様であり、
少なくともリーダーは熟知していなければならない。
トラバースする個所の足場が悪く滑りやかったり、転落時の危険が著しい場合には、
確保ロープとハーネスを用いて竪穴を昇降する場合と同じレベルでの安全策が必要となる。
そのような場所は、横穴でのケイビング装備だけでは通過できず、
竪穴装備が必要となってしまう。
クレバス、クラック
洞窟の成因として、岩の割れ目に沿って空間が拡大するということがある。それ故に、
洞窟の中には天井が高く幅の狭いクラックやクレバスが存在する。
それは時として、幅40cm-1m、深さ30mに達する事さえある。そこまで深くなくとも、
このような場所を通過する際には落ちる事の無いように注意しなければならない。
通過する際にはチムニーテクニックを多用するが、もし滑り落ちた時、
落ちた始めの場所よりも下の方が徐々に狭まっていたりすると、
左右の壁に体が擦られるながら落ちるので怪我をする事はあまり無いかもしれないが、
落ちた勢いで狭い場所に挟まり、自力で登り返す事ができなくなる。
また逆に、下が広がっているとすれば自由落下となり、危険だ。
このような危険がクレバスやクラックにはあるという事を認識して通過する事が必要である。
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左上:流れが強い場合は壁などで体
を支えることが必要だ
右上:流れが弱ければ胸までの深さ
でも徒渉は簡単である
左 :流れが強すぎると徒渉は容易
でなくなり、ロープを渡さ
なければならない |
徒渉
水流が流れている洞窟の中にはしばしば、深いプールや流れの強い場所がある。
膝程度の深さであればあまり問題でないが、腰より深い場合には流される危険もある。
もし流されてしまい、下流に浅い場所が無いばかりかサイフォンや深みがあると、
捜索は非常に困難になる。しかし、実際のところ、
日本国内に非常に強い水流のある洞窟は極めてまれなので、こうした場面に出会うことはないだろう。
徒渉を行う場合は、浅い場所や水の流れの弱い側を選び、また洞壁などに掴りながら移動する。
水中には落盤や、深みが隠れていることがあるので、十分に注意することが必要だ。
徒渉する際に水面下が見えることはあまりない。見えるのは上流に向かって先頭で歩いている時だけだろう。
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左上:水面上の空間はあるが水深がない。
こうした場合でも顔が水面に接触
する事がある
右上:顔を横向けにして通過している。
左下:仰向けで通過している。水深は
60cm程度だろう |
水潜り
水潜りといっても、完全に水没した空間を越えることは滅多に無い。
たいていは、呼吸のできる5-10cmの隙間が天井と水面の間に続いている場所がほとんどで、
仮に水没区間があるとしても、その距離は50cm未満といったところである。
それより長い区間や呼吸のできない隙間が続く場合は、
ケイブダイブの世界となるけれども、ケイブダイブを行うには、
スキューバの道具を持って通過できるだけの空間が水中にあることが必要で、
そうでない場合には、突破することは難しい。
一般に、水潜りを試みるような場所は、天井が急に低くなったり、
洞窟の直径が急に狭まったような所なので、ケイブダイビングできるほどの空間があるほうが珍しい。
そのため増水によって呼吸空間が閉じてしまった場合の救助は困難であるかもしれない。
水潜り個所を通過する際には、地上の最近や今後の天候を考慮しなければならない
僅かな隙間が天井と水面の間にある区間に到達し、
その個所を突破する時に考慮しなければならない事項は
呼吸が出来るだけの隙間が空いているか
水面下に十分な空間があるか
の二点である。呼吸ができる空間が空いているように見えても、水面下の深さがなければ、
体を入れることができないし、ぎりぎり入れることができるだけでは、詰まる可能性もあり、非常に危険だ。
概ね、水深が40-60cmは必要だろう。水潜りの区間が数十cmであれば、もっと浅くても大丈夫かもしれない。
通過する際には仰向けになり、目と鼻を水面上に出すようにして進む。
この場合、進行方向が確認しにくいので足から先に進むか、幅があるならば、体を斜めにし、
顔を若干傾け先が見えるような形で進むのが良いだろう。また、水潜りの際にはできるだけゆっくり行かなければ、
自らが起こした波によって、呼吸が困難になるかもしれない。特に空間が狭い場合にはヘルメットを外す必要がある。
逆に空間がもう少し広い場合には顔を横向きにして進むこともできる。
水の流れがあり、水潜りをする場所が狭い場合、自らの体で水路に栓をしてしまう形になることがある。
すると当然の事ながら水位が上昇するので、注意しなければならない。
完全に水没している個所を突破することと決断するのは非常に勇気が必要な行動である。
可能ならば避けるのが基本である。渇水時などに通過されていて、完全水没区間が非常に短く、
また水中空間も広いということが判っていれば、通過は可能かもしれない。だが、そうした情報が無い場合は、
足を水没区間に入れ、足の長さ程度の範囲に水面があり、なおかつ呼吸できる空間があるかどうか、
水中空間は広いかどうかを確認しなければならない。こうした場所では、
体を水中に入れた時に水が濁ってしまい、水の透明度はほぼゼロに等しくなってしまう事が多いので、
空間を視認することは非常に難しい。
通過の際には、頭から息を止めて入り、向こう側の空間に一気に抜ける。もし、うまく抜けられなければ、
直ちに元に戻る。この時、洞窟が狭く何処かに引っかかって元に戻れなければ溺れてしまうので、
十分な水面下の空間が無ければ非常に危険である。
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右上:短い距離ならば、補助無
しでも泳げる
左上:距離がある場合は浮きに
なるものを使用する
右 :流れがゆっくりならばタ
イヤチューブが使える
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プール
洞窟内には時折、水深の深いプールがある。水温が10℃前後以下と低い場合には、
ウェットスーツなどを着ていない限り入水してはならないが、可能であればボートを使用するべきである。
また、泳ぐ距離が長い場合、水深が深い場合も同様にボートの使用を考えても良い。また入水した後、
長時間の活動を行うのであれば、入水を避けた方が良い。体が濡れた場合には、
体温を奪われ体力の低下が激しくなるからである。
しかしながら、水温、気温が高く、距離が短い場合には泳いで渡る事もある。
泳ぐ距離が5m未満で流れも弱いのであれば、真に泳げない人でなければ特に問題はない。
ケイビングスーツ内部に溜まった空気が浮きとなることもあり、容易に渡れるだろう。
だが、それ以上の距離を泳ぐ場合には、浮きになる何らかの物を使った方が良い。例えば、
ライフジャケット、浮き輪やタイヤチューブ、あるいはカメラを入れる防水箱なども浮きの役割を果たす。
流れがある場合には、泳ぎの上手い人がガイドロープを最初に渡して、
後に続く人はそれを頼りにする方法もある。服を着て靴を履いたままの泳ぎとなるので、
水泳の時のような速さで泳げないからだ。
川が流れ込んでいて流れ出しが視認できないプールでは、
もしかすると何処かに水中へと引きずり込まれる流れがあるかもしれない。
これは流れ込む水の多いプールほど可能性が高く、十分注意する必要がある。
洗面台の栓を抜いた時のように、渦を巻いて吸い込むほどでなくとも、
こうした流れに巻き込まれると、
なんらかの浮力体やロープの助け無しに脱出する事は難しいだろう。
いずれにせよ、もしも溺れて沈んでしまったら捜索は大変困難である。
たいていのプールでは泳ぐ際に水に濁りを生じさせ、透明度を失わせてしまうからである。
防水でないライトを使用している場合には電池ボックスなどの浸水に気をつけるべきである。
洞窟を出た後に、手入れをきちんとしないと、あっという間に錆びて壊れてしまう。
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左:底に泥の溜まったプール。足が沈み込んで歩きにくい
中:柔らかいグアノのプール。靴が脱げそうになるほどである
右:一旦埋まると、脱出には力が必要である |
泥
洞窟には泥が堆積している場所がある。多くの場合は乾燥していて問題とならないが、
湿り気の多い場所や、水流の側では少し厄介である。
泥の表面が絶えず湿っていると、とても滑りやすくなる。
斜面に堆積している場合には登れなかったり、滑り落ちてしまう。
滑った先が崖になっていることもあるので、そうした場合は確保を取るなどの安全策を講じる。
水の側に泥が堆積している場合に時折あるが、
泥が非常に柔らかく一歩足を踏み入れると膝や腰まで埋まることがある。
こうした場所を通過するのは困難であるので、避ける事のできるルートを探した方が良いだろう。
そういったルートが無ければ、泥の海を這って歩く感じで行けば何とかなる。その際に、
靴が脱げないようにしておかないと、脱げてしまうかもしれない。
また泥だけでなく、大量のグアノやムーンミルクなどでも同様の障害となる事がある。
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